白髪一雄は日本の抽象画家であり、戦後日本の前衛芸術を牽引したアーティスト集団 具体美術協会の中心メンバーとして知られています。白髪は1924年兵庫県に生まれ、兵庫県立尼崎中学校(現兵庫県立尼崎高等学校)に在学中、絵画部に入ったことがきっかけで画家を目指すようになりました。京都市絵画専門学校(現京都市立芸術大学)の日本画科を卒業後し、その後 油絵に転向し大阪市立美術研究所で学びました。1952年、同じく画家の金山明、村上三郎、田中敦子らと共に0会を結成し、同年に結成された現代美術懇談会に参加しました。そして1955年には具体美術協会に参加しました。
白髪は1954年頃より、天井から吊したロープにぶら下がり床に広げたキャンバスに足で直接描く「フット・ペインティング」の制作をはじめ、未知の領域を切り開きました。1960年代以降 白髪は密教に心惹かれ、1971年には比叡山延暦寺で得度し、天台宗の僧侶となりました。1972年に吉原治良の死去をきっかけに具体美術協会が解散し、この頃から白髪の作品には密教の影響が表れ始めました。素足の代わりにスキージという長いヘラを用いた作品を制作するようになりましたが、その後再び「フット・ペインティング」に回帰していきました。2008年4月8日白髪は83歳で亡くなりました。
2013年ニューヨークのグッゲンハイム美術館で 具体美術協会の回顧展である『具体:素晴らしい遊び場 Gutai: Splendid Playground』展が開催され、これを機に具体作家たちの活動は見直され海外で高く評価されており、なかでも白髪の作品はとくに注目されています。2014年にはサザビーズ・パリで作品『激動する赤』が約5億円で落札され話題となりました。
現在彼の作品は、東京の原美術館、ダラス美術館、広島市現代美術館などのコレクションに収蔵されています。