フランツ・クライン
Franz Kline
1910年−1962年
フランツ・クラインは1910年、アメリカ・ペンシルベニア州に生まれた抽象表現主義の画家です。ボストン大学で絵画を学んだ後27歳でロンドンに渡り、へズリー美術学校で学びます。30歳頃までは故郷を想起させる風景画などを描いていましたが、1943年にウィレム・デ・クーニングと出会い、ジャクソン・ポロックらと交流することで抽象表現へと向かい、1950年に黒と白による抽象画で初の個展を開きます。その翌年に、大きな身振りと荒々しいタッチによって描き出されるアクション・ペインティングによる大型の作品を発表したことで、抽象表現主義の画家とみなされるようになりました。
クラインの白と黒の作品は「書」の表現に似ているものの、それとは異なる発想で生み出されています。文字から離れることなく書くことを前提とする書に対し、クラインは「線を引き、描く」ことで非再現的な抽象的絵画空間を表現しています。背景の地には白い絵の具が塗られ、前景の黒い部分と同等の力を持って作用し合うことにより、重厚な画面を成り立たせているのです。1956年頃からは、白と黒だけでは表現しきれないものを解決するため再び鮮やかな色彩を用いた作品を制作するようになりますが、模索の途中に52歳の若さで急逝してしまいます。クライン亡き後もアメリカ国内を中心に大規模な回顧展が幾度となく行われ、その作品は多くの著名美術館に収蔵されています。