デイヴィッド・ハモンズは1943年、シングルマザーのもと10人兄弟の末っ子として、アメリカ・イリノイ州に生まれたアーティストです。19歳でロサンゼルスに移り、シュイナード芸術学校(現在のカルアーツ)とオーティス・アート・インスティテュートに学び、型にはまらないアプローチと芸術表現で知られるブルース・ナウマンや、ジョン・バルデッセリなどの作品に大きな影響を受けました。同時に音楽にも影響を受け、これらが将来自身の強固な芸術基盤を築くのに役立ち、さらには当時のアメリカを悩ませていたあらゆる文化的固定観念や人種問題にも気づかせてくれました。
現代アートは、何らかの形で意識を高めたり、地域社会の変化に影響を与えたりと常に重要な役割を果たしてきましたが、ハモンズも同様に、ロサンゼルスやニューヨークで日常的に目にする黒人に対する人種差別や偏見に関連した問題に取り組もうとしたアーティストです。その作品の多くはミニマリズムやポスト・ミニマルアートを連想させ、それに加えてアメリカ文化の中での黒人の位置付けについてデュシャンピアン(マルセル・デュシャンに影響を受けた人々)的な言及をしています。
ハモンズは彫刻、版画、ビデオ、絵画などの作品を通してアフリカ系アメリカ人の美術史に重要な解釈を与え、白人の多い美術界と有色人種の抑圧や文化的奴隷化の歴史との間にある社会的な境界線を埋めることで美術界における固定観念を批判し、また鋭く的確にあばいています。ハモンズの作品は、ユーモアに満ちたパロディであると同時に、現代社会に残る人種差別への明確な警告でもあります。風刺の効いたユニークな方法でこれらの厳しい現実を直視し、私たちの社会が耳を傾けるべき確固たる教訓を与えてくれています。