フレッド・ウィリアムズ
Fred Williams
1927年−1982年
フレッド・ウィリアムズは1927年、オーストラリア・メルボルンに生まれた画家、版画家であり、20世紀を代表する風景画家のひとりでもある人物です。1940年代にメルボルンのナショナル・ギャラリー・スクールなどで学んだのち、1951年に渡英。ロンドンでエッチングと印刷を学び、人物像の作品を多数制作しました。そのかたわらで同じモチーフを様々な媒体で何度も、そして何年もかけて描き直すという手法を確立しました。また美術館を頻繁に訪れてヨーロッパの近現代美術に親しみ、特にセザンヌやマティス、そしてキュビストの作品を吸収して形式的な革新性を追求していきました。
1957年の帰国後は、オーストラリアの環境が持つ光、スケール、そして厳しくも美しい自然に直面すると、風景画を描くことに集中するようになり、それがウィリアムズの芸術の主要なテーマとなりました。形を一連の抽象的なモチーフに還元するという独自の手法は、1963年に制作された代表作のひとつである「ユーヤンの風景」に顕著にみられます。広大な土地を思わせる画面に、縮小された幾何学的な形態を組み合わせたその作品は、ウィリアムズの風景に対する独特のヴィジョンを象徴するものです。
1970年代に入ると川や海の風景に興味を持ち、水平線に関連した風景の観察から生まれたストリップ形式の作品の試作を始めました。そして1977年にはオーストラリア人アーティストとして初めてMoMAで個展を開催しました。ウィリアムズは、多くのオーストラリア人が思い描く風景のあり方を変えた独特のビジョンを持つ、オーストラリアで最も重要な芸術家とされています。