ヴィクター・パスモアは1940年代から1950年代にかけてイギリスで抽象絵画を開拓した重要なアーティストです。彼は静物や風景を描く具象画家として成功した後 抽象画家の先駆者となり、コラージュやコンストラクションなど当時のイギリスで最も革新的な絵画を制作しました。
「絵は 他の物を表現するものではなく、それ自体が独立した物でなければならないと感じました」
1908年イギリスのチェルシャムに生まれたパスモアは、地方自治体の職員として働きながら1927年からセントラル・スクール・オブ・アート・アンド・クラフツに通い、1880年代以降のフランス美術の発展を反映した芸術スタイルを試していました。1930年代初頭に叙情的な抽象画を試みた後、1937年にウィリアム・コールドストリームやグラハム・ベル、クロード・ロジャースらと共にユーストン・ロード・スクールを設立し セザンヌ風のリアリズムのスタイルを教え、自身の肖像画や風景画にも取り入れました。
1952年になると厳格な構成主義をとるようになり、いくつかの作品は木やガラスで作られた立体的な壁のレリーフとなりました。1949年からセントラル・スクールで教鞭をとっていた彼は、1954年にダラム大学キングズ・カレッジの絵画科長に就任し1961年まで在籍しましたが、その後は本格的に絵画に専念できるようになりました。1960年代になると幾何学的な要素が和らぎ、曲線やエッジが取り入れられ、1970年代には鮮やかな色彩が開花しました。そしてその後は、いつもの白い背景に明るい色彩の点や線、面などを配置した叙情的な抽象的構成となり、晩年には自然の形の輪郭を描いたものもありました。このような移り変わりは1966年に、彼が亡くなるまで暮らしたマルタに移ったことがきっかけとなっているようです。
パスモアは1998年マルタ共和国のグーディアで亡くなりました。
2016年イギリス・ノッティンガムのジャノグリー・ギャラリーで『Victor Pasmore Towards a New Reality』展が開催され高い評価を得ました。現在彼の作品は ニューヨーク近代美術館、イェール・ ブリティッシュ・アート・センター、ロンドンのテートギャラリー、ドイツ銀行コレクションなどに所蔵されています。
▼パトリモンジュ・マルティ財団のヴィクター・パスモア・ギャラリー 公式サイトはこちらから
https://www.patrimonju.org/fpm-visit-victor-pasmore-gallery
▼英国パブリック・アート・コレクションのヴィクター・パスモアのページはこちらから
https://artuk.org/discover/artworks/search/actor:pasmore-victor-19081998