前川強は1936年、大阪府に生まれた画家です。高校卒業後、家電メーカーや映画会社の宣伝部でグラフィックデザイナーとして勤務する傍ら作品を発表していましたが、1959年に前衛画家 吉原治良と出会い師事。織り目の粗い麻布「ドンゴロス」に着目し、それらを裂いてひだをよせて着色し画面に定着させるという、絵画と立体造形の要素を併せ持つユニークな表現を生み出しました。作品は吉原に高く評価され、第8回具体美術展に出展。1961年には具体美術協会会員となり、海外へもその名を広めるなど具体の第二世代の中心として活躍しました。

以来1972年に具体が解散するまで毎回具体美術展に出展を続け、その後も一貫してマテリアルにこだわだわり、繊維の細かな柔らかい麻布や綿布といった様々な布を駆使した作品を発表してきました。またデザイナーでもある前川らしく、図形や色彩から造形の探究を行うデザイン性に優れた実験的作品も残しています。国内での受賞歴も多く、1982年には「現代日本絵画展」で大賞を受賞。近年は再び「ドンゴロス」を用いて、80歳を超えてなお、野性味あふれつつも洗練された作品で新たな展開を見せています。

 

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