クルト・シュヴィッタースはダダイズムと構成主義の両方に関わったドイツのアーティストです。
コラージュやファウンド・オブジェ、タイポグラフィ、サウンド・ポエトリーなどを駆使した「Merz(メルツ:メルツ絵画)」や、インスタレーションの先駆けと言える「Merzbau(メルツバウ:メルツ建築)」などの作品で知られています。これらの作品でシュヴィッタースは 雑誌の切り抜きや廃棄物などのリサイクル品を用いて、急速に変化する世界を表現しようとしました。
「使用済みの路面電車の切符、流木のかけら、ボタン、屋根裏やゴミ山から出てきた古いガラクタなどが 絵画の材料にならないわけがない」と彼は考えていました。
「古いゴミのかけらでも声を出すことは可能であり、私はそれを 接着剤や釘で繋ぎ合わせたのです」
1887年にドイツのハノーファーに生まれたシュヴィッタースは、ドレスデン・アカデミーで オットー・ディクスやジョージ・グロスらと共に美術を学びました。その後、第一次世界大戦中にドイツ軍に徴兵されるまでは、故郷でキュビズムやポスト印象派を中心とした作品を制作していました。シュヴィッタースはてんかんを患っていたため兵役を免除され 機械工場の製図工として働きましたが、その経験から「無生物には人間の魂が宿っている」と考えるようになりました。戦後はベルリンに移り、ハンナ・ヘッヒやラウル・ハウスマン、ハンス・アルプ(ジャン・アルプ)らと交流しました。その後 エル・リシツキーやピエト・モンドリアンの影響を受けながら、メルツの最初の作品や、サウンド・アートの先駆けと言える音響詩「ウルソナタ」などを制作しました。
ゲシュタポとの対立を経て1937年にナチス政権下のノルウェーに逃れ、後にイギリスに定住し、1948年にケンダルで亡くなりました。