ジグマー・ポルケは 写真や印刷技術のドットを使った作品やドイツ・ポップ・アート的作品の他、隕石の粉や洗剤など 化学反応や温度で変化する非伝統的な素材を用いた独創的で実験的な絵画や写真で知られるドイツ人アーティストです。風刺や心理状態、作り話を織り交ぜた絵画作品『不思議の国のアリス』（1972年）では、美的センスを辛辣に追求しています。

「私の作品には リスクを冒す要素がなければならない」   かつてポルケはこのように語りました。

ポルケは第二次世界大戦中の1941年にポーランドのオレシニツァで生まれ、戦後のドイツ人追放令により家族と共に東ドイツに逃れ、1953年には旧西ドイツに亡命しました。西ドイツに移ってから感じた消費文化の氾濫に、ポルケは大きな影響を受けました。1959年から1960年にかけてデュッセルドルフのステンドグラス工場で見習いをした後、デュッセルドルフ芸術アカデミーに入学しました。アカデミーでポルケは、カール・オットー・ゲッツやゲルハルト・ヘーメの下で学びつつ、当時同アカデミーで教えていたヨーゼフ・ボイスから特に強い影響を受けました。
デュッセルドルフ美術アカデミーで学んでいたポルケは、ゲルハルト・リヒターやコンラッド・リューグらと共に、現在では「資本主義的リアリズム」と呼ばれる作品を制作しました。彼らは、社会主義リアリズムの国粋主義的なテーマに答えると同時に、西ドイツの急成長する消費社会を批判しました。ポルケは1977年から1991年までハンブルグの美術アカデミーの教授を務めました。この時の教え子にはゲオルク・ヘロルドなどがいます。ポルケの作品はジュリアン・シュナーベルやデヴィッド・サーレなどを含む多くの若い世代のアーティストに多大な影響を与えています。

ポルケは1978年にケルンに移住し、晩年の数十年間は   歴史的な出来事とそれに対する認識をテーマにした絵画を制作しました。そして2010年ポルケはドイツのケルンで亡くなりました。現在彼の作品はアメリカのシカゴ美術館、ニューヨーク近代美術館、J・ポール・ゲティ美術館、ロンドンのテート・ギャラリー、ドイツのボン美術館などに収蔵されています。