井上有一
Yuichi Inoue
1916 ― 1985年
井上有一は、1916年東京生まれ。「東洋のジャクソン・ポロック」とも例えられる現代書家で、絵画的ともいえる生命力あふれる表現により、伝統的な書法とは一線を画す新境地を開拓しました。
その活動は1950年代の「具体美術」「もの派」と並ぶ革新的なムーブメントとなります。また、三千数百点にのぼる作品は、戦後の日本現代美術界の一つの歴史を築いたとも言えます。
墨を大量にふくませた大筆に全身の躍動をゆだね、巨大な和紙に向かい、力強く一字を自らの身の丈ほどの大きさに書くのが特徴で、特に漢字一文字を大きな画面にダイナミックに書く「一字書」は、井上をもっともよくあらわす作品として知られています。
「日常使っている文字を書くことで、誰でも芸術家になれる。書は世界に類を見ない芸術である」
「元気に自由に書くのが良い」
そんな風に語った井上有一は、師弟関係による技術指導をよしとせず、職業芸術家としての道も拒否。小学校教師として生涯を過ごしました。
代表作には悲劇の傑作『東京大空襲』シリーズがあり、1945年の東京大空襲で仮死体験をしたとの話も残っています。