ジョルジョ・デ・キリコはイタリア人の両親もとギリシャのヴォロスで生まれました。
歪められた視点と傾いた地面、古典的な広場にたたずむ奇妙な人物像や影。何とも言えず不可思議で憂鬱な雰囲気を醸し観るものを困惑させるような彼の絵を、一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。

『特に必要なのは、世界のすべてを謎とみなす豊かな感受性です ― 奇妙なものの巨大な博物館のように世界に住むことです』
このように語ったキリコは、目に見えるものや形あるものだけが全てではなくその裏側に秘められた神秘や謎、もうひとつの真実に目を向けることを表現しました。

画家アルノルト・ベックリンや哲学者フリードリヒ・ニーチェに大きな影響を受けたキリコは、このような特徴的で不可思議な作風を『形而上絵画』として提唱し、シュールレアリスムに大きな影響を与えました。シュールレアリストのほかエドワード・ホッパーやヒッチコックにも影響を与え、アンディー・ウォーホルにも愛されました。日本では2014年『ジョルジョ・デ・キリコ －変遷と回帰－』と題し「ピカソが畏れ、ダリが憧れた」芸術家として紹介した展覧会が開催され国内を巡回しました。