アレクサンドル・ノル
Alexandre Noll
1890年−1970年
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アレクサンドル・ノルは1890年、フランスのアルザス地方に生まれたアーティストです。第一次世界大戦中にスケッチや水彩画を描いたり、木版画を制作したりする以外美術に関わることはほとんどありませんでしたが、1920年代に入って木版画の技術を発展させることを決意します。それが徐々に彫刻へと引き継がれていき、本格的に芸術の道を歩み出しました。作品は初期には日傘の手元やランプの足の制作から始まり、やがてファッションデザイナーのポール・ポワレに依頼されたランプスタンドへと発展していきます。1935年頃になると家具の制作をはじめ、第2次世界大戦中に家具のデザインと彫刻のアイデアを展開し、自らのスタイルを確立していきました。
戦後、人工的な素材を使った大量生産品が増えていく中、「木で作れるものは全て木で作る」と天然木に一貫したこだわりを持ったノルは、ソテツ、マホガニー、チーク材などを天然木を用いた家具に彫刻を施した「家具の彫刻」の制作をはじめました。その後国際美術工芸展やミラノ ・トリエンナーレへの出品を経て、1950年に入ってからは彫刻制作へと戻りました。国内外の展覧会に参加したノルのアプローチとテクニックは、詩的かつ直感的で哲学的であると同時に、自然と純粋な形と密接に結びついていました。