アンゼルム・キーファー
Anselm Kiefer
1945年−
1945年、旧西ドイツ・ドナウエシング生まれのアンゼルム・キーファーは、ドイツの新表現主義を代表する芸術家です。法律を学ぶもやがて美術に転向し、デュッセルドルフ芸術アカデミーでヨーゼフ・ボイスに師事します。近現代におけるタブーや物議を起こしかねない問題を積極的に作品に取り込もうとする傾向があり、特にナチス・ドイツを主題とした作品が多くみられます。中でも1969年発表の、ヨーロッパ各地でナチス式敬礼をする自身を撮影した一連の写真作品「占領」は、激しい論争を巻き起こしました。
1970年代には、ドイツ文化の深淵を探る一方、ゲオルグ・バゼリッツに影響を受け、油絵に加え作品に日用品や草、藁、燃やした本など様々な素材を使うようになりました。1980年代以降は伝説や神話、旧約聖書などと現実の歴史を組み合わせた重層的なテーマで、物質感を強調した大型の作品を多く制作しています。主題や意味、そして思想性を特に重視するキーファーの作品は、人間の本質や根本的なものについて考えることを、現代人に迫っているかのようです。