エミール・オルリック
Emil Orlik
1870年−1932年
エミール・オルリックは1870年、ハンガリー帝国(現在のチェコ)・プラハに生まれた版画家です。幼い頃から絵を描くことに夢中だったオルリックは、ミュンヘンの美術学校に学び、その才能はすぐに教授に認められることとなりました。在学中は日本の浮世絵に憧れを抱きながら、エッチングやリトグラフなどの版画制作を学びました。
1896年には、弟子であり生涯の友であるベルンハルト・パンコックと共に、カラー木版画の制作を初めて試みました。その後世界各国を旅しながら次々と新しい方法を学び、ひとつのジャンルやスタイルにこだわらず多くのことを試すカメレオンのような芸術家でした。オルリックの版画は彼の旅の記録であり、特に1892年から1900年にかけての作品は、まるで絵日記のようなものです。
1900年、オルリックは自分が魅了されている木版画の技術を源流で学びたいとの思いから、日本にも訪れます。10ヶ月の滞在中には画家、木版画家、印刷工に師事し、実に多くの知識を吸収しました。また狩野元信からは、日本画の筆法も学んだといいます。日本で見た版画に多大な影響を受けたオルリックは、自刻の多色摺り木版画の制作をはじめ、1904年には版画集『日本便り』を刊行したと同時にドイツ各地で講演会を行い、木版画の普及にも努めました。