エンツォ・マーリ
Enzo Mari
1932年−2020年
エンツォ・マーリは1932年、イタリア・ピエモンテ州に生まれたポストモダニズムの芸術家です。作家、家具・工業などのデザイナーとしても活躍し、イタリアンデザインの金字塔のような存在として知られています。ミラノのブレラ・芸術アカデミーに学び研鑽を積みますが、社会主義的思想を持つマーリにとってアートという市場の不条理さに悩まされ、アートからデザインへと関心が移っていきました。また美術工芸運動の理想主義からインスピレーションを受け、1956年の卒業と同時にキネティック・アートグループである「アルテ・プログラマータ」に参加します。翌年にはミラノのタネーゼ社とコラボし、初期の重要なデザインのひとつである木彫りのパズル「16 Animali(16匹の動物)」を制作します。一枚の木の板をカットする事で動物の形を作り上げたこの玩具は、マーリの視覚研究の結果生まれたもので、積木でありながらパズルでもあり、またそのデザインの美しさからインテリアオブジェとして現在でも復刻版が毎年限定で作られるほど高い人気を誇っています。
「優れたデザインは富裕層の特権である」という考えに反対し、機能的かつエレガント、さらには低コストで、使う人との繋がりを感じられるようなデザインを目指したマーリは、機能性、品質、コストなどの目標を達成するため、職人やメーカーと密接に関わってきました。結果、アレッシィ、ザノッタ、無印良品など多くのデザインショップや家具メーカーとの強いコラボレーションを築きました。晩年まで現役でデザインに勤しんでいたマーリですが、2020年、世界を恐怖に陥れたCovid-19により帰らぬ人となりました。