シュザンヌ・ヴァラドンは1865年、フランス中部に生まれた画家です。5歳の頃にモンマルトルに越し、10代後半になると界隈に暮らす画家のモデルを務めるようになりました。肉感的な身体と豊かな表情、そしてその魅力と人格で「恐るべきマリア」と呼ばれ、ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌやルノワールなど一流の画家たちを虜にする存在でした。

自身が絵を描き始めたのは1883年のこと。それまでモデルをしながら制作過程を目にしていたヴァラドンは、見よう見まねで素描をはじめました。処女作は『自画像』。この作品は国立近代美術館に所蔵されています。1890年には国民美術界の展覧会に女性画家として初めて出展したり、1897年には女性の入学が認められた国立美術学校で、当時画学生として描くことが禁じられていた男女の裸体を野獣派的なタッチで表現したりと、先駆的な存在となっていきました。

ヴァラドンは、繊細な風景画を描くことで知られるモーリス・ユトリロの母です。近年はユトリロを通して再評価が進んでおり、2015年には日本でも個展が開催されています。