ジョージ・トゥッカーはミッドセンチュリーのニューヨークを描いたソーシャル・リアリズムのテンペラ画で知られるアメリカの画家です。『The Subway (地下鉄)(1950)』をはじめ 都市の孤独や幻滅をテーマに、周りの環境に囚われたような人物を描いた 叙情的で詩的な絵画を多く描いています。
「絵画は 人生と折り合いをつけるための試みである」
「人間の数だけ 解決策がある」
トゥッカーは1920年にブルックリンに生まれロングアイランド南岸の町ベルポートで育ち、少年時代から地元のアーティストに絵画を学ぶなど美術に親しんでいました。その後ハーバード大学で英語の学位を取得しながら、ボストンのフォッグ美術館に通うようになり、中世後期とルネッサンス初期の絵画を学ぶ機会を持ちました。1942年に卒業後、海兵隊に入隊し士官候補生学校に入学しましたが 健康上の理由ですぐに除隊となりました。
その後ニューヨークのアート・スチューデンツ・リーグでレジナルド・マーシュに師事し、画家としてのキャリアをスタートさせました。そこで出会った画家ポール・カドムスにエッグテンペラという技法を教わり、この技法はトゥッカーの瞑想的な性格に良く合ったゆっくりした画風でした。1950年にリンカーン・カースティンが企画した「Symbolic Realism」展に出品し知名度を高めましたが、その結果マジック・リアリスト(マジックリアリズム)に分類されることになりました。同年、ホイットニー美術館が『The Subway (地下鉄)(1950)』を購入しました。トゥッカーは1951年にエドウィン・ヒューイット・ギャラリーで初の個展を開催しました。
彼は1965年から1968年までアート・スチューデント・リーグで教鞭をとり、また長年取り組んできた公民権運動への参加も継続していました。彼はいつも早朝のミサに出席し、家に戻って午後遅くまでスタジオで絵を描き、夜にはしばしばスケッチをするという日課を守っていました。数十年の間に彼の作品は、より象徴的で夢のようなものになってゆきました。2007年には名誉ある国民芸術勲章を受賞しています。
トゥッカーは2011年にヴァージニア州ハートランドで亡くなりました。現在彼の作品はブルックリン美術館、スミソニアン博物館、ウォーカー・アート・センターなどにコレクションされています。