ソフィ・カルは 写真家、映画監督、探偵など様々な顔を持つフランスのアーティストです。独特の物語的要素と、イメージとテキストの組み合わせによって 親密さと公共性、現実とフィクション、芸術と生活の間の境界線をしばしば曖昧にする作品を制作しています。彼女の作品は 自分や他人の現実を明らかにするために整然と編成され、その現実の制御された部分を 偶然の産物とする方法をとっています。
1953年パリに生まれたカルは17歳で中学を卒業した後進学はせず 中国やアメリカ、メキシコを旅して7年間を過ごしました。彼女は美術学校には通わず、「私はアーティストになろうとは思っていませんでした。自分がやっていることを芸術だとも思っていなかった。」と語り、自分のプロジェクトの多くを「private games(プライベート・ゲーム)」と表現しています。彼女の「private games(プライベート・ゲーム)」は1970年代後半にパリに戻った際、パリを再発見することを目的に 街を行き交う見知らぬ人々を追跡することから始まりました。アメリカで暮らしていた時に始めた写真を追求し、父親がコレクションしていた写真家デュアン・マイケルズのテキスト・キャプションワークに触発され、イメージとテキストを組み合わせた表現を用いるようになりました。
最初の主なプロジェクト『The Sleepers』(1979年)は 自宅に見知らぬ人を招き、彼女のベッドで8時間過ごしてもらい、その様子をメモと写真で記録したもので1980年にパリ青年ビエンナーレでインスタレーションとして発表しました。この作品でカルは 写真の親密さと、人類学的な冷徹さで書かれたテキストの陳腐さを対比させました。また彼女は、パリの道行く人の中から見ず知らずの一人の男を尾行し、ヴェネツィアに行き、13日間かけてその行動を記録した『Suite Vénitienne』(1980年)や、ヴェネツィアのホテルで客室係として働きながら宿泊客の部屋や持ち物を写真に収めるというプロジェクト『The Hotel』(1981年)などの作品でも知られています。
その他、生まれつき目の見えない人々に「美しいものとは何か」を問い その回答をもとに写真を撮影し、視覚や美に対する認識を問いかけた『Les Aveugles(盲目の人々)』(1986年)、2007年のヴェネツィア・ビエンナーレで発表した、亡くなる前の母親の最後の瞬間を撮影したビデオ『Couldn’t Capture Death』など、カルは 常に独自の視点で現実を捉え、大胆で奇抜なプロセスで作品を生み出し、いわゆる普通の概念を揺さぶり続けています。
ソフィ・カルはフランスのパリを拠点に活動しています。