ピエール・モリニエ
Pierre Molinier
1900年−1976年
1900年にフランスのアジャンで生まれた写真家・画家のピエール・モリニエは、女性の肉体美に力点を置いた絵画や、ハイヒール、コルセット、網タイツにアイマスクを身につけた自身の女装姿やマネキンをモチーフとした写真、肉体写真の各部位を交換し組み合わせたフォトモンタージュなど、揺るぎのない独自の美意識のもとに作られた作品で知られています。当時はその作風が敬遠され無名時代が続くものの、1955年頃に交流を持った著述家のアンドレ・ブルトンに見出され、50歳をすぎてデビューを果たした遅咲きの作家でもあります。
自らの性癖と芸術表現を高次なレベルで融合したことにより、現代でもタブー視されるような性倒錯の領域をアート作品として残したモリニエですが、その最期も衝撃的でした。横たえた自らの身体を鏡に映しながらこめかみに愛用の拳銃を当てて引き金を引き、人生そのものもひとつの作品として完成させるかのようにこの世を去ったのです。