ピーノ・ピネッリはイタリア抽象芸術の代表的存在であり、美術評論家のフィリベルト・メンナが定義した「分析的絵画」を代表するアーティストの一人です。素材の革新的な使用と形式的な実験を通して、絵画そのものの本質を探究し、輪郭や幾何学的な軌跡を模倣した ミクストメディアの幾何学的形態を生み出しています。
ピネッリはシチリア島カターニアに生まれました。カターニアの美術学校で学んだ後、1963年にミラノに移り、ルーチョ・フォンタナやピエロ・マンゾーニ、エンリコ・カステラーニなどの影響力あるアーティスト達や、グループ・ゼロのアーティスト達の芸術的議論に惹かれてゆきました。
1970年代初頭ピネッリは作品を減らしてゆき、モノクローム『Monocromo(モノクローム)』シリーズを展開しました。そして1973年からは作品タイトルを『Pittura (ピットゥーラ:絵画)』とし、その後に色の頭文字を付けています。『Topologia(トポロジー)』と『Monocromo(モノクローム)』シリーズでは、絵の具の表面に着目し 大きなキャンバスに小さな絵を並べたり、組み合わせたりしています。その後1976年に発表された『Disseminazione』シリーズでは、壁自体が作品の一部となり、絵画と周囲の環境との関係を壊しています。また同年 ピネッリは キャンバスを使わず、フランネルなどの素材を用いて作品に触覚的な要素を与えました。
彼の絵画には空間への基本的な執着がないため安易に分類することができず、キャンバスの境界線を越え、しばしば広大でモジュール式の ダイナミックな形態へと成長してゆきます。ピネッリの絵画はキャンバスから離れることで、絵画の伝統的概念に挑み、芸術と生活の間の 絶え間なく進化する対話を豊かにしています。
ピネッリは現在イタリア、ミラノを拠点に活動しています。彼の作品は トレント・ロヴェレート近現代美術館、ナポリのドナレジーナ現代美術館、フォンダズィオーネ・ザッペティーニ、ドイツのフランクフルトのドレスナー銀行、ロットヴァイル貯蓄銀行などのコレクションに収蔵されています。