フィリップ・ガストンはアメリカを代表する画家であり、その作品は抽象表現主義から 絵画的フォルムと漫画のような人物の特異な表現へと移行してゆきました。
「絵は 表面ではなく、想像上に存在します」
「それは心の中で動き、それは物理的には全く存在しません
それは幻想であり 魔法の欠片であり、あなたが見ているものは あなたが見ているものではないのです」
ガストンは1913年カナダのモントリオールでウクライナ系ユダヤ人の両親のもとに生まれ、カリフォルニアで育ち、ジャクソン・ポロックと共にロサンゼルスのマニュアル・アーツ・ハイスクールに通いました。ニューヨークに移り住んだガストンは1930年代に公共事業促進局に在籍し、メキシコ壁画やイタリアのルネッサンス絵画に着想を得た作品を制作しました。彼は1950年代にはウィレム・デ・クーニングやジャクソン・ポロックと並び ニューヨークのアートシーンに欠かせない存在となりました。
しかしガストンは1960年代後半に 抽象画の成功と対話を放棄した結果、ギャラリーでの表現を失い 批評家からも非難を浴びることになりました。しかしながら、美術史に最も永続的な貢献であることが証明されたのは 彼の晩年の作品です。フードを被ったクランズマン(アメリカの白人至上主義による秘密結社Ku Klux Klanの団員)、リチャード・ニクソン、燻る煙草、巨大な眼球など、繰り返し登場するイメージを特徴とする『In the Studio』(1975) などの彼の作品は何世代にも渡り多くの画家たちに影響を与え、ガストンを20世紀美術の基準に定着させました。
ガストンは1980年ニューヨーク州ウッドストックで亡くなりました。
2013年、作品『To Fellini(1958)』がN.Y.クリスティーズで2,580万米ドルで落札されガストンのオークション記録を樹立しました。
現在 彼の作品はニューヨーク近代美術館、シカゴ美術館、ロンドンのテート・ギャラリーなどのコレクションに収蔵されています