ブライス・マーデンは色彩とジェスチャーを駆使した繊細な表現で知られるアメリカのアーティストです。マーティンのキャンバスは抽象化の本質と 絵画という媒体そのものへの継続的な探求の産物です。
1938年ニューヨーク州ブロンクスヴィルに生まれ、1957年から58年までフロリダ・サザンカレッジで学び、1961年にボストン大学美術工芸学部で美術学士を取得しました。その後、イェール大学の美術・建築学部で学び、1963年に修士号を取得しました。マーデンはアレックス・カッツやジョン・シューラー、リチャード・セラやチャック・クローズらに師事し、大きな長方形の単色パネル、特に淡い色調のパネルという初期の美学を確立しました。学校を卒業後はニューヨークに移り、ユダヤ博物館で警備員として働きました。彼はこの仕事を通じて1964年に開催されたジャスパー・ジョーンズの回顧展に触れ、ジョーンズの初期の作品を研究し、フランシスコ・デ・スルバランやフランシスコ・デ・ゴヤ、ディエゴ・ベラスケスなどのバロックの巨匠たちとの関連性を考察しました。また翌年の夏にはパリでアルベルト・ジャコメッティやジャン・フォートリエ、エドゥアール・マネなどにも興味を持ち、個人的な研究を続けました。
再びニューヨークに移り、1966年にはロバート・ラウシェンバーグのアシスタントとして働き始めました。また同年マーデンはバイカート・ギャラリーで初の個展を開催し、油絵と蜜蝋を組み合わせた作品を発表しました。その後1971年ギリシャのイドラ島を訪れたことをきっかけに光や風景への強い関心が高まり、タイ、スリランカ、インドなどを訪れたことでアジアの文化的歴史、風景や伝統に触れることになりました。そして1984年にニューヨークのアジア・ソサエティーで開催された『The Masters of Japanese Calligraphy(日本の書道の巨匠たち)』展が彼のカリグラフィーへの関心をさらに高めるきっかけとなりました。
これらの影響を受けて、マーデンのスタイルは初期のミニマリズムの厳格さを超え、より具象的な抽象画の流派に向かっていったのです。1975年にはニューヨークのソロモン・R・グッゲンハイム美術館で、彼にとって美術館では初となる展覧会を開催しました。その後アムステルダム市立美術館(ステデライク・ミュージアム)やカッセルのドクメンタ、ロンドンのテート・ギャラリーやサーペンタイン・ギャラリーなどでも個展を開催しています。2006年にはニューヨーク近代美術館で大規模な回顧展が開催され、サンフランシスコ近代美術館、ベルリンのハンブルガー・バーンホフ現代美術館に巡回しました。
彼の作品はニューヨークのソロモン・R・グッゲンハイム美術館、ニューヨーク近代美術館、ワシントン・ナショナル・ギャラリー、バーゼル美術館、シカゴ美術館などのパーマネントコレクションに収蔵されています。マーデンは現在ニューヨークを拠点に活動しています。