買いたい・探したい

ARTIST/ART

平賀敬
Key Hiraga
1936年−2000年

平賀敬は1936年に東京で生まれた画家です。盛岡で過ごした幼少期、料亭であった家の壁に掛かっていた萬鐵五郎や松本竣介の絵に衝撃を受け、学生の頃は戦後日本の社会再編の中で生まれた新興の芸術環境に惹かれていきました。この時期の作品は、線と色の実験的な試みで現代の都市生活のアノミー(無規範状態)を描き出しています。繊細な墨で描かれた抽象的なフォルムと交差する人物の輪郭線は、ジャン・デュビュッフェの作品と比較されてきましたが、実は後に感情的な絡み合いや性別が曖昧な人物を描いたデュビュッフェの作品を先取りしたものでした。

1965年、パリに渡った平賀は、当初消費社会の慣習に批判的な日本の作家集団「無頼」に親近感を抱いていましたが、ヨーロッパの首都のナイトライフと寛大な性慣習にどっぷりとはまり、やがて堕落していきました。この転換は書道的な線から鮮やかな模様や色への劇的な変化で作中に示されています。この頃の一連の作品「K氏の優作品雅や生活」や「H氏の優雅な生活」には、紫がかった斑点のある肌を持つ人物がしなやかな乳房や官能的に広げられた手足を撫でたり揉んだりするシーンが描かれており、1960年代の東京社会をあざ笑う山口瞳の小説「江分利満氏の優雅な生活」にも通じるものが見られます。1977年にパリのアトリエを引き払い、正式に帰国してからの作品は徐々に落ち着きを見せる一方、強い色使いは保ったままでした。浮世絵の模写を基本にしたデッサン力で、エロティックかつ諧謔的に、そして細部まで丁寧に描き出される平賀の個性的な「日本」は、今なお観るものに強烈な印象を与え続けています。

 

一覧ページに戻る
お問い合わせ 資料請求