アルベール・マルケはフランス、ボルドー生まれの画家です。
1890年にパリに移り装飾美術学校に学んだ後、エコール・デ・ボザール（官立美術学校）でギュスターヴ・モローの下で学びました。ここではアンリ・マティスやラウル・デュフィ、ジョルジュ・ルオーらと親交を深めました。特にマティスとはルームメイトであったこともあり二人はお互いに影響を与え合う生涯の友となりました。この頃アンデパンダン展やサロン・ドートンヌに作品を発表しました。1905年には、マティスらと共に最初のフォーヴィスム（野獣派）の展覧会に出展し初期フォーヴィズムの有力作家の一人となりましたが、フォーヴィズムの原色調の色彩や激しいタッチはマルケには馴染まず、この画風は長続きはしませんでした。そして1910年頃からは、マルケらしいニュアンスに富んだ色彩の　穏やかな作風に回帰してゆきました。

マルケの作品は最小限の筆致で形を伝え、微妙な色彩を捉えた描写でボリュームと空間を保ちながら、天候や光条件を想起させます。
彼は生涯に渡りフランス、イタリアやドイツなどのヨーロッパ各地、スカンジナビアや北アフリカを行き来し　海や船、光や活気を帯びた街、水辺の景色を描きました。主にこのような風景画で知られるマルケですが、肖像画も描いています。そのスタイルは日本の四条派や葛飾北斎を思わせ、マティスはマルケのことを『我が北斎』と呼んだと言います。

彼の作品はロシア、サンクト・ペテルブルグのエルミタージュ美術館、フランス、パリのオルセー美術館、ロンドンのテートギャラリー、ニューヨーク近代美術館など主要な美術館でコレクションされています。日本でも国立西洋美術館、松岡美術館、愛知県美術館、ポーラ美術館、大原美術館、ひろしま美術館など多くの美術館でコレクションされています。