エルヴェ・テレマックはハイチのポルトープランス生まれのフランス人画家です。

テレマックは腐敗した新しい政治状況から逃れるため、1957年に故郷のハイチを離れ ニューヨークに移り、1960年までアート・スチューデント・リーグで学びました。その間に抽象表現主義や、アーシル・ゴーキーに代表されるアメリカ版シュールレアリスムに出会いました。卒業後テレマックは 人種差別や政治、そして今まで浸透していた抽象表現主義に違和感を覚え、アメリカを捨て、パリに移りました。そしてパリでアーティストとしての活動を続け、フランスのポップアート運動の中心的存在となりました。
1964年のヴェネチア・ビエンナーレで アメリカやイギリスのポップアートが登場したことに刺激され、テレマックをはじめとするフランスのアーティスト達は「ナラティブ・フィギュレーション」という運動を展開しました。そして美術評論家のジェラール・ガシオ＝タラボに導かれ、テレマックと他のアーティストは 新しい絵画的アプローチを促進するグループ展「Mythologies quotidiennes（日常の神話）」（1964年）を開催しました。この頃にはテレマックは、絵画や彫刻、グラフィックアートに加え、コラージュやアッサンブラージュにも取り組んでいました。

彼のカラフルなコンポジションは、日常的なものを 時に混乱した、時に平凡なシーンの中に描き、マスメディアや広告、コミックなどのポップカルチャーを批判的に理解し、流用していることを常に示唆しています。テレマックの作品は、パリのミュゼ・ナショナル・ダート・モダン（国立近代美術館）やニューヨーク近代美術館などに所蔵されています。