カジミール・マレーヴィチはロシアの画家で芸術理論家であり、シュプレマティズム運動の創始者です。マレーヴィッチが遺した抽象絵画理念は20世紀の絵画に計り知れない影響を与えました。彼の影響力の大きな作品『Black Square(黒の正方形)(1915)』と『Suprematist Composition: White on White(シュプレマティスト・コンポジション:白の上の白)(1918)』は、これまでに制作された最初の抽象絵画の一つとしてしばしば引用されます。
「白い面に黒い正方形は 抽象的な感情が表現されるようになった最初のかたちでした」
マレーヴィチはこのように書いています。
「正方形=感覚、 白い面=この感覚を超えた無限の空間」
マレーヴィチは1879年ウクライナのキエフでポーランド人の両親のもとに生まれました。父親は砂糖工場を経営していました。彼は14人兄弟の最初の子供でしたが、兄弟のうち大人になったのは9人だけでした。家族は頻繁に引っ越ししマレーヴィチは幼少期のほとんどをウクライナで過ごしました。1904年、父の死後 彼はモスクワに移住しモスクワ美術大学に入学、印象派的なスタイルで描くことを学びました。学校ではウラジミール・タトリン率いるソユーズ・モロディオジ(Soyuz Molodyozhi)として知られるロシア・アヴァンギャルドのグループに参加しました。1915年には 彼は信念を象徴的宣言に展開し、シュプレマティズムと幾何学的形状に由来する純粋な美的感覚の価値を論じました。マレーヴィチはヨーロッパ中で展覧会を開催し、一時的に有名になりました。しかしその後スターリン主義政権により、ブルジョア的アーティストだとして非難されようになりました。そして 適応を余儀なくされたマレーヴィチは 伝統的な印象派のように農民や風景を描くスタイルに戻ってゆきました。
マレーヴィチは1935年5月、ソ連のレニングラードにて57歳で亡くなりました。彼の葬式に集まった哀悼者たちは彼のBlack Square((黒の正方形))を掲げた旗を振って 彼を見送ったと言います。
現在 彼の作品は ニューヨーク近代美術館、ロンドンのテートギャラリー、サンクトペテルブルグのエルミタージュ美術館、スイスのバーゼル美術館、ウィーンのアルベルティーナ(美術館)などのコレクションに収められています。