ゴンカル・ギャッツオ
Gonkar Gyatso
1961年−
ゴンカル・ギャッツオは、中国の文化大革命時代の1961年、チベット・ラサで人民解放軍の兵士の息子として生まれたアーティストです。20代前半の頃北京で中国の伝統的な筆画を学び、その後インドのダラムシャーラーを訪れ、チベット仏教に関する人物や曼荼羅などを題材にした掛け軸、タンカの制作を学びました。これがギャッツオの活動の転機となり、作品にアイデンティティや変幻自在の文化といったテーマを取り入れるようになりました。
1996年、奨学金を得てロンドンに渡ると、ファインアートを学びながらアート界との関わりを深めていきました。チベットと中国との関係だけにとどまらず、グローバルな視野を持って資本主義や戦争が人間に与える影響などを見つめ、それらを作品に取り込んできました。2000年代に入るとコラージュや新しい視覚言語の実験を始め、そのスタイルは一転します。毛沢東の言葉を引用して仏陀の姿を作り上げたり、漫画や企業のロゴ、漢字など日常にありふれた物を取り入れて仏陀を表現するようになりました。以来そのスタイルが定着し、ポップカルチャーのアイコンと仏教精神のシンボルである仏陀とを融合させた作品へと移っていきました。
コラージュや写真、絵画、インスタレーションなどさまざまな技法で作り出される作品は、グローバリゼーションと移民に関連してアイデンティティがどのように変化するかを表現し、またチベット文化のステレオタイプを遊び心を持って覆しつつ、西洋での商業的な仏教人気を反映し、それぞれの文化の中で生きるというハイブリッドな境遇について模索しています。