サム・ギリアム
SAM GILLIAM
1933年−
サム・ギリアムは1933年、アメリカ・ミシシッピ州に生まれた画家です。1955年にルイビル大学で黒人の第2期生として美術の学士号を取得し、1961年には同大学で修士号を取得。卒業後は高校教師として働く傍ら制作活動を続けました。アフリカ系アメリカ人による公民権運動やベトナム戦争反対運動など、政治と社会の両面で激動の時代を迎えたこの頃のアメリカで、ギリアムはその状況に触発されて大胆な取り組みを始めました。
「抽象芸術はアフリカの黒人の生活とは無関係だ」といわれていたその時代であっても、ギリアムのようなアーティストにとって抽象化は重要な課題であり続けました。試行錯誤の末たどり着いたのは、大きなキャンバスを木枠から外し、それを壁や天井に吊るしたり、ひだを作って垂らしたりし、3Dの要素も含んだ独自の手法です。この革新的な手法は「ドレープ」と呼ばれ、この頃代表作となる作品をいくつか制作しています。1975年半ばになるとドレープから離れ、「ブラック・ペインティング」と呼ばれるダイナミックで幾何学的なコラージュ作品を制作するようになります。1980年代に入ると再度スタイルは劇的に変化し、アフリカのパッチワーク・キルトを彷彿とさせる即興的な手法を用いたキルティング・ペインティングへと移行します。
ギリアムはアフリカ系アメリカ人として初めてアメリカ代表としてヴェネツィア・ビエンナーレに参加したり、多くの賞を受賞するなどし、多くの作品がオークションでも高値で取引されています。またパリ美術館、MoMA、テートモダンなど、各国の著名美術館がギリアムの作品を所蔵しています。