シュテファン・バルケンホールは現代ドイツを代表する彫刻家です。
日常の一瞬を凍結させたようなニュートラルな表情の さりげない人の姿、粗削りでトーテムのような彼の彫刻は　フォークアートのようであり中世の彫刻のようでもあります。

『フィギュラティヴ（具象的）彫刻はしばしばメッセージの担い手として誤用されるものだが、私の彫刻は 問いとなり鏡となります。そしてそれを意味で満たすのは鑑賞者なのです』

バルケンホールは、1957年ドイツ、フリッツラー生まれました。15歳の時、国際美術展ドクメンタ5（1972）のジャン=クリストフ・アマンのキュレーション展「Realism」で数多くの具象絵画や彫刻を目にし「自分だけのポップ・アートをつくる」と決心しました。1976年からナム・ジュン・パイクやシグマー・ポルケらが教鞭を執っていたハンブルク大学に入学。ミニマルな作品で知られるウルリッヒ・リュックリーム（Ulrich Rückriem）に師事しました。当時主流となりつつあった 抽象やミニマル、コンセプチュアルなアプローチに対し、バルケンホールは「中断された伝統を再開するため、私は具象を新たに作り直し蘇らせなければならない」という思いを抱き、偶像の代わりに　日常のありふれたペルソナに集中することを決心しました。以来一貫して具象でありながら、ミニマルでもあり、虚構と実像の間を彷徨うようなユーモラスで魅力的な作品を作り続けています。

1992年よりドイツ国立カールスルーエ造形芸術大学で教鞭を執っており、現在はフランス、ドイツを拠点に活動しています。
日本では2005年に大阪国立国際美術館と東京オペラシティアートギャラリーで「シュテファン・バルケンホール：木の彫刻とレリーフ」が開催され話題となりました。2019年には東京の小山登美夫ギャラリーで三度目の個展を開催しました。現在も世界各地で個展やグループ展など展覧会を開催し活躍しています。また、シカゴ美術館、ロサンゼルス・カウンティ美術館、アイルランド現代美術館、ハーシュホーン美術館彫刻庭園、ルードヴィヒ美術館、ボン美術館やフランクフルト現代美術館をはじめ多くの美術館に所蔵されており、日本では国立国際美術館、東京国立近代美術館にコレクションされています。