ヘルマン・グロックナーは1889年、ドイツ・ドレスデン近郊で生まれた画家、彫刻家であり、ドイツ古典派モダニズムの前衛芸術家の中で最も優れた芸術家のひとりである重要な人物です。職業訓練学校に通い、テキスタイルのデザイナーとして働いた後にドレスデンの美術学校に入学。ドローイングやプロジェクション、幾何学模様に興味を持ち学びを深めていきました。

第一次世界大戦時には服役し、その後美術学校にもどりますが、グロックナーの実験的な作風は誰にも受け入れらることがなく、学校を去ることになりました。1932年には再結成されたドレスデン・セセッションのメンバーとなりますが、ナチスは彼の絵画やグラフィックに展示や販売の機会を一切与えませんでした。

その形式主義的な作風のためにドイツの政府関係者からは長い間正当な評価を受けられずにいたグロックナーでしたが、1969年にドレスデンで開催されたグラフィック作品の展示会を機に再生が始まりました。1979年には西ドイツの永住ビザを取得し、1984年にはドイツの国家賞を受賞。さらにはDEFA（東ドイツの映画製作機関）がグロックナーのために映画を制作しました。また、数年後にはドレスデンで最初に建設されたホテル・ベルビューの公園や、ドレスデン工科大学にも彫刻が設置されることとなりました。

グロックナーは国家社会主義の独裁政権とそれに続く東ドイツ民主共和国の体制下で、不利な政治的状況に置かれながらも、「非協力主義者」として数十年にわたってドレスデンで孤立して活動を続け、傑出した芸術作品を生み出しました。「芸術家の芸術家」とも言われ、多くの芸術家たちを魅了してきた偉大な人物です。