ロバート・マザーウェル
Robert Motherwell
1915年−1991年
ロバート・マザーウェルは1915年にアメリカ・ワシントン州に生まれた画家で、抽象表現主義の創設者といわれる人物です。スペイン共和国へのエレジーなど、政治的、哲学的、文学的なテーマに触れた抽象絵画や版画のシリーズで知られています。カリフォルニア美術大学で絵画を、スタンフォード大学で哲学を学び、スタンフォードでは象徴主義やエドガー・アラン・ポーなどの書籍を通してモダニズムに触れたことが、その後の絵画やドローイングの主要なテーマとなりました。
1940年にニューヨークへ移住し、本格的に制作活動を始めます。ロベルト・マッタやウォルフガング・パーレーンらヨーロッパのシュルレアリストと交流を深め、彼らからオートマティスムの理論を紹介されます。この概念はマザーウェルに永続的な影響を与え、その手法を独自に修正、改良したことが、アメリカオリジナルの前衛芸術運動となる抽象表現主義の基礎を築く上で重要な役割を果たしました。理論修正されたオートマティック・ドローイングは、代表作のひとつである「メキシコのスケッチブック」に反映されており、初期の頃には他作家の模倣に近かった作風が、のちの作品ではより平面的で、インク部分をはねあげるような大胆な描き方へと進化していきました。1965年〜67年の作品「スペイン共和国へのエレジー」では、白地に黒を基調とした150のバリエーションで構成された有機的なものと幾何学的なもの、偶発的なものと意図的なものの堂々たる一節を描き上げています。