ヴィヤ・セルミンスは1937年、ラトビア出身の画家です。幼少期にソビエト占領下の母国からドイツへとたどり着き、第二次大戦後に家族でアメリカへと移住。当時10歳で英語が話せなかったセルミンスは絵を描くことに集中し、それを見た教師たちの後押しもあって芸術の道へと進んで行きました。
インディアナポリスのアートスクールと、UCLAのサマースクールで学んだセルミンスの初期作品は、テレビ、ランプ、鉛筆など身の回りにあるものを再現したり、ポップアートに影響された彫刻などを制作していました。1960年代後半から1970年代にかけては絵画を放棄し、黒鉛での制作に専念。海や月の表面、貝殻の内側、岩石のクローズアップなど、自然の要素の写真をもとにフォトリアリスティックなドローイングを制作していました。セルミンスの手間のかかる手法はしばしばゲルハルト・リヒターと比較され、またセルミンス自身は淡い灰色で描く静物画の巨匠、ジョルジョ・モランディから大きな影響を受けたと語っています。
1970年代後半になるとフォトリアリズムの要素を取り入れた彫刻の制作も再開し、ニューメキシコ州北部のリオ・グランデ川沿いで見つけた石をブロンズキャストにアクリル絵具を使って忠実に再現した石のシリーズを制作しました。この作品は現在MoMAに収蔵されています。1980年代以降は今までの様々な技法を用いて、抽象性と写実性のバランスをとりつつ、緻密な表面展開で輝度の高い作品の制作を続けています。セルミンスは1965年以降、世界各地で40回以上の個展、そして数百回にも及ぶグループ展を重ね、その作品は前出のMoMAをはじめアメリカ各地の美術館やヨーロッパの美術館に所蔵されています。