川瀬巴水
Hasui Kawase
1883年−1957年
川瀬巴水は1883年、東京都港区に生まれた版画家です。衰退した日本の浮世絵版画を復興すべく、吉田博らとともに伝統的な題材を西洋美術の影響を受けた画風で描く「新版画」を確立し、近代日本で最も重要な版画家のひとりとして知られています。日本各地を旅し、旅先で写生した日本的な美しい風景を原画に、自然光や雰囲気のある効果を用いて叙情豊かに、そして完璧な構図をもって表現した版画作品を数多く発表したことで、「旅情詩人」とも称されています。
川瀬の作品は、アメリカの鑑定家により欧米で紹介されたことで国内よりもむしろ海外での評価が高く、1918年の初版から絶大な人気を博したとともに、1920年台にはニューヨークのオークションで高値をつけるほどでした。多作の版画家であり、連作で「旅みやげ第一集」(第三集まであり)、「東京二十景」など多くのシリーズを発表しています。1953年には文化財保護委員会(現文化庁)により、無形文化として木版技術の記録保存が計画され、川瀬の「増上寺の雪景」の制作の間の全記録がとどめられました。