ザオ・ウーキーは1921年に中国・北京に生まれた現代美術家です。14歳で杭州の国立美術学校に入学し、卒業後は杭州美術研究所の教授を務めていましたが、形骸化した周囲の画壇に対する不満と反発を抑えがたく、1948年にパリへ移住します。グランド・ショミエールのアトリエに学び、翌年には早くも個展を開催。ジョアン・ミロやパブロ・ピカソからも賞賛を受け、“中国のボナール”と評され大成功を収めます。1950年代のパリではアンフォルメル運動が台頭し、ウーキーもそれに身を投じます。パウル・クレーとの出会いも重なって作品は次第に抽象化を深めていき、50年代後半には純粋抽象画に到達します。中国水墨画の伝統に根ざした、東洋と西洋の美意識を融合させた独自の“叙情的抽象”の世界を創り出し、風景や自然をテーマに描かれた空間の奥行きを感じさせる作品は、ヨーロッパの抽象画に新しい可能性を開きました。

叙情性豊かなザオ・ウーキーの大画面は、苦闘の末に生み出されたという気配はまったくなく、常にみずみずしい創造性にあふれ、新生の息吹を伝えています。その活躍はパリにとどまらず、アメリカ、スイス、ロンドンなどで定期的に個展を開き、日本にもしばしば訪れるようになります。1994年には高松宮殿下記念世界文化賞を受賞し、1993年と2006年にはレジオンドヌール勲章を授与されています。

 

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